秋は山が綺麗に見えます。紅葉があれば一段と美しくなります。今回は山の漢字を説明しましょう。
山の下の一は地上、また水平線です。そこから中央、左右の三山が飛び抜けて高く見えます。漢字を作った中国人が考える山は三峰なのです。
山は模様ともなり、それを着る第一は帝王の儀服になりました。日本に伝わった僧侶の袈裟模様に遠山があり、これは襖絵にもなります。
さて、古代の中国人の考えでは、山は平地より高く突起し、万物を養育する地域と考え、そこには聖なる存在があると考え、それを山神としました。山は空気が清浄でそこに入ると仙人になるとしました。中国では特に紀元前五、六世紀ごろの戦国時代に五行思想の影響を受けて東西南北と中央の五岳が重要という信仰が起こりました。山東省泰安県北方の東岳泰山、陝西省秦嶺山脈中の西岳華山、湖北省洞庭湖南の南岳衡山(寿岳)、河北省定県北西の北岳恒山の四方四岳と中央の河南省鄭州南西の嵩山の五岳です。特に泰山は天子が諸侯をここに会して封禅の儀式を行いました。なお、中国の民間では人が死ぬと、その魂は泰山に行くと信じられました。泰山は岱山とも書き、ここに泰山の神を祭り岱廟と称しました。その神である泰山府君また太山府君は司命・司録と三尊をなして人の寿命・福禄を司るとして道教で祀りますが、仏教と習合して閻魔大王の書記とも、地獄の一神ともされます。この泰山府君信仰は当地を訪れた慈覚大師円仁によって日本に将来され、本地垂迹説によりその本地は地蔵菩薩といい、比叡山の京都側の西坂本に赤山権現として祀られました。実に日本の山岳信仰は中国伝来のもあるのです。
さらに中国では山は塚の意味があり、墳墓を意味します。形容詞に使うと、動かないとなり、正しいという意味になります。
仏教では比叡山延暦寺・高野山金剛峯寺があり、山号と言いますが、京都で山と言えば比叡山です。中国では浙江省寧波市の阿育王山が有名です。なお、禅宗には建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺の鎌倉五山、天竜寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺の京都五山があります。なお、南禅寺は五山の上とされ、禅寺の格式を示しましたが、もともとは中国五山制度を取り入れたものです。なお、山という漢字の日本での用例はいろいろ面白いものがありますが、またの機会にします。