【漢字講座】第40 寅・虎(とら)

今年の干支は壬寅、壬は「みずのえ」と読み、水性を示し、寅は恐い動物である虎です。水は生きとし生けるものすべての命の源でもありますが、時に台風・津波などで猛威を振るいます。一方、虎の黄色と黒の模様は注意と安全のマークです。寅は虎、この「とら」を漢字でなぜ虎と書くかを説明しましょう。

虎は虍かんむりに儿をつけます。虍は音はコまたはク、虎の皮の黄色と黒の縞もようです。儿は虎の足を象ります。四つ足の動物が足を折ってしゃがんでいる様をいうのでしょう。つまり大きな頭の虎の皮をかぶってその足を持つ動物が虎なのです。別に虍の字はまた未だ見ぬさまという意味があり、虎の頭が見えたら逃げる。見つかったら食べられてしまいます。ライオン獅子の居ない中国・朝鮮・日本の東アジアでは虎は最強の動物です。もっとも日本に虎はいませんが、虎の話しは中国・朝鮮から沢山入ってきています。

中国では役人を虎に喩えます。もっとも「苛政は虎より恐い」という諺がありますから、苛政と役人は全く同じではありません。「苛政は虎より恐い」に出てくる虎は人間を食ってしまう恐ろしい動物です。でも虎はすべての人間を食ってしまうわけではありません。苛政とはひどい政治、惨い政治のこと、その被害はすべての人々をみな殺してしまう。まだ虎の方がましだというのが、「苛政は虎より恐い」の意味です。

虎は虍かんむりになぜ儿を付けたのでしょう。恐ろしい巨大な虎の頭と身体が軽快に疾風のごとく走る、四本の足で疾駆、迫ってくる様を一字に象形した漢字が虎の一字なのです。「虎の威を仮る(狐が虎の威を借りていばる)」「虎口を脱す(危険を乗り越えた)」、「虎口を去って慈母に帰す(これで一安心)」「虎爪象牙(猛獣の武器)」「虎子(とらのこ、だいじなもの)」「虎争(弱肉強食、食うか食われるか)」「虎視眈々(こしたんたん、獲物を狙う)」「虎首を争う(功名争い)」「虎を養うが如し(給与を充分に与えて仕事させる)」「虎冠の吏(貪欲な官吏)」「虎を野に放つ(恐ろしい猛将を自由に活動させる)」「虎を養いて患を遺す(禍根を残す人の処遇をして後悔する)」、多々あります。以上、虎は強い恐いイメ-ジです。よく注意して危険を避けることが第一です。他方、虎も味方に付けて守護とする智恵も必要でしょう。