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古典会だより-春の七草 スズシロ 清白

万葉集』巻一の冒頭には5世紀後半頃活躍した雄略天皇御製歌に
『籠(こ)もよ み籠持ち、掘串(ふくし)もよ、み掘串(ぶくし)持ち、この岳(おか)に 菜摘(なつ)ます児(こ)、家聞かな 告(の)らさね(籠も良い籠を持ち、土掘り道具の掘串も良いのを持って、この岡で若菜をお摘みの娘さん あなたのお家は何処(どこ)か聞きたい 言って下さい)』と若菜摘みが歌われています。春夏秋冬、四季の変化に恵まれた日本では、季節毎(ごと)の節目(ふしめ)を大切にして来ました。青龍の春(緑)、朱雀の夏(赤)、白虎の秋(白)、玄武の冬(黒→紫、玄は奥深く暗い意)、それぞれの季節の移動の時期が土用で、黄色です。土用は夏が特別扱いですが、本来は各季節にあります。お正月飾りやお祝いの五色の幕は、単に綺麗というだけでなく、季節の順当なめぐりと、無事への願いがこめられているのです。『古今和歌集』には「君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手(ころもで)に雪はふりつつ」とあり、清少納言『枕草子』では「七日、雪まのわかなつみ、あをやかに、例はさしもさるもの目ちかからぬ所に、もてさわぎたるこそをかしけれ(七日、雪の間の若菜摘み、青やかな菜を、普段はそんな菜など気にもしないのに、大騒ぎして集めるのが面白い)」とあり、正月七日の若菜つみは、野遊(のあそ)びと食べる楽しみを兼ねたもので、七日に七草、七種類の菜を粥にして食べ、春の祝い、福寿の願いとして来ました。 続きを読む

古典会だより-多摩川-

拝島大師の南方約五〇〇メ-トルに多摩川が流れています。そもそも拝島大師の伽藍建物は多摩川の流れで形成された崖、というより「はけ」と呼ばれる土地に建っています。拝島という地名も、今から約五〇〇年前の戦国時代に多摩川の西南方の対岸の丘陵上にある滝山城から見た時に島に見えるからついたと言います。
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古典会だより-ダルマの目

一月二日・三日、拝島大師初縁日には江戸時代より続く全国一早いダルマ市が立つことで有名です。ダルマは南インド出身菩提達磨の、面壁九年座禅姿に似せた張り子の玩具で、大師が緋の衣を着ていたというので、赤く塗っています。また、底を重くして、倒してもすぐ真直ぐに立つようになっており、「七転び八起き」「不倒翁」の別称もあり、特に開運の福ダルマと呼ばれ、縁起物となり、家内安全・商売繁盛・心願成就の願いをこめるようになりました。 続きを読む

【漢字講座】第40 寅・虎(とら)

今年の干支は壬寅、壬は「みずのえ」と読み、水性を示し、寅は恐い動物である虎です。水は生きとし生けるものすべての命の源でもありますが、時に台風・津波などで猛威を振るいます。一方、虎の黄色と黒の模様は注意と安全のマークです。寅は虎、この「とら」を漢字でなぜ虎と書くかを説明しましょう。 続きを読む

古典会だより-春の七草ースズナー

春の七草は『万葉集』巻一冒頭の雄略天皇御製歌「籠コもよ み籠もち 掘串フクシもよ み掘串持ち この岳オカに 菜摘ツます児コ」とあるように、正月七日の若菜摘みが原点で、いまだ寒い中、野遊びがてら雪まの若菜を摘みとり、あつものや粥にして食べ、春の祝い福寿の願いとして来ました。ですから春の七草は、生命の根源たる食べることにかかわり、野草、雑草と言われるハコベ、オギョウ、ホトケノザ、ナズナ、後に栽培種ともなるセリ、食用に改良を加えられたスズナ蕪カブ、スズシロ大根と、鎌倉から室町時代にかけて定まり、「セリ、ナズナ、オギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七草」と詠われ、江戸時代から正月七日は五節句-正月七日(人日)、三月三日(上巳)、五月五日(端午)、七月七日(七夕)、九月九日(重陽)-の一つと定められ、若菜節、七種ナナクサの祝い、七種の節句と呼びました。 続きを読む

慈覚大師円仁讃仰「入唐求法巡礼行記」研究-その44-

○四月五日(続) 新羅人の多く住む宿城村①に到った。僧らが密州より当地に到った理由を問うたので、答えて言う、「新羅僧の慶元・恵溢・教恵らは便船に乗って来たりてここに到った。一両日宿住しようと思う。請うらくは、勾当し愍れみを垂れてここに留めてください」と。
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古典会だより-拝島大師参詣のしるべ

拝島大師は南は奥多摩街道に接し、およそ五〇〇メートル先には多摩川が西から東に流れ、『万葉集』にも詠われた「多摩の横山」が連なります。平成六年五月三日新本堂落慶以来、同年暮には水屋水天宮、平成七年十二月二日奥多摩街道に面して総門南大門が完成、親柱二本の長さ8・20メートル、径48・00センチメートル、柱間は5・40メートルあり、これに高さ60・00センチメートル、幅30・00センチメートルの大虹梁を貫き、切妻瓦屋根が乗り、親柱に付いた控え柱にも切妻屋根を渡し、組物は大仏様の通し肘木、三手先の賑やかさ。 続きを読む