前回の音楽に続いて形がよく分からないものの漢字を挙げましょう。天と地の漢字です。
天地は上の天と下の地、お釈迦さまが誕生された時、七歩歩み、右手を上、すなわち天を指し、左手は下、すなわち地を指して「天上天下、唯だ我独り尊し」と謂われたのです。まず、天という漢字から考えてみましょう。漢字は物の形を象った文字と言われます。でも天には形が有るのでしょうか。難しい問題です。
【天】天は大と一との合字で会意とします。本義はおおぞら、転じて高い、尊いの意味になります。おおぞらは至高でそれ以上に高いものがなく、その大は並ぶものがない。故に一と大とを合わせて天としました。また一説に、指事文字、大は人の意に用い、一はおおぞらの形を示します。おおぞらは人の頭上を覆い、常に頭を挙げて仰ぎみるところであるから、大に従い、その上に一を書いて大空の意を示します。また、一説には指事文字で、本義は人の頭のいただき、転じておおぞらの意になります。大は人が両手両足を拡げた形に従い、その頂点に一を書いて、頭のいただきの意を示します。
天の漢字の意味は
①あめ、そら
②天体、またその運行
③太陽、④宇宙の主宰者
⑤自然、無為自然の道
⑥君、王、帝
⑦父また夫
⑧頼みとすべきもの
⑨時節、季候
⑩年月日の日、ひ
⑪陽
⑫乾
⑬世の中
⑭運命
⑮うまれつき、性
⑮いのち(命)
等々とあります。また、仏教では天は、光明・清浄・自在・最勝の、天人の住む妙なる世界。一部は須彌山に在り、一部は大空にあります。また弁才天、吉祥天、大黒天、毘沙門天など天部の神々を指すことがあります。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天の六道の一でもあります。
【地】地は会意と形声の意味で、土と也(女性)の合字とします。本義は天地の地で、地は土をもって成る故に土に従い、易に於いて乾坤の坤は地に配し、女に配する故に也に従ってその意味を表わします。一説には、土乙力に従うとしますが、間違いとされます。仮借して啻(ただ)、諦、杝(まがき)の意味に用います。
地の漢字の意味は
①つち、天の対、大地
②とち、くが(陸)、おか(岡、丘)
③地所、田畑
④地の神
⑤くに、国土
⑥ところ、場所、地点
⑦たちば、立脚地、境涯
⑧みぶん(身分)、地位、家柄
⑨したぢ(下地)、きぢ、地質
⑩陰、⑪坤、⑫啻(ただ)
⑬諦、つまびらかにする
⑭杝(まがき)
とあります。
いずれにしても天地は衆生が生きる世界全体です。