【漢字講座】第39 丑・牛(うし)

本年の干支は丑(うし)、丑の音はチュウです。指事文字で又と|との合字、又は右手、|を以て手の3指を連結して、寒気のために未だ事を為し得ぬ意味を示し、寒気の解けるのを待ち、将に手を挙げて仕事をし始めようとする意義を表します。丑は十二干支の第二、方位では北東ですが次の寅の方位と合わせて丑寅、艮の方位は鬼門とされます。京都の鬼門除けは比叡山で延暦寺伽藍が興隆した所以です。鬼滅が流行していますが、本来は鬼門除けです。丑はまた年月日にそれぞれ付けられ、丑月はまた陰暦十二月を言います。丑日もありますが、有名なものは丑の時です。特に丑の三更は丑三つ時、深夜すべてが寝静まる時です。丑三つ時、丑満時にはお化けが出る。怖い怖い。静かに寝ていましょう。
さて、動物のうしは牛です。頭に二本の角が生え、尾が下に下がっている象形文字が漢字の牛です。その歩きは遅いので牛歩と言います。でも牛飲馬食といって、牛が水を飲、馬が餌を食べるのはいずれも大量に豪快に飲み食いします。それで牛飲とは牛が水を飲むように大いに酒を飲むことを言うのです。でも牛が鋤を引いて耕作することを牛耕と言いますが、農業革命の一時代を開いた功績が牛にはあるのです。そこで牛は世界中で聖なる獣として大事にされ、尊敬されてきましたが、古代オリエント、エジプトから始まり、古代インドは特に顕著な傾向があり、現代まで変わりません。古代インド最古のインダス文明のモヘンジョダロ・ハラッパ-遺跡出土文物の印章に牛が描かれていることは有名です。西アジアからインドの古代の農耕文化はいずれも牛の耕作を前提としていますので牛を神聖視し、神々との関わりを創造してきました。仏教でも五大明王の大威徳明王は水牛に跨がります。獅子に乗る文殊菩薩、象に乗る普賢菩薩とともに水牛に乗る大威徳明王があり、その信仰は九州国東半島の六郷満山の信仰から関東天台寺院に盛んでした。

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