【漢字講座】酉(とり)

本年の干支は丁酉、酉年です。動物のとりは鶏ですので、前回は鶏という漢字を説明しました。今回は干支の酉の漢字を説明します。

酉、干支の第十位トリ、方位では西方、季節は中秋八月、時刻では午後五時から七時。酉の漢字は酒を醸造する器物の形に象ります。酉の時期の中秋八月に熟した黍を酒に醸造します。よく熟成するところから酉は成る、老いる、飽くなどの意味です。酉は氵を付けると酒になります。水を混ぜた酒の意味です。お銚子から猪口に注ぐことが転じて、溜池の水を田に灌漑する意味のそそぐという意味になりました。酉の字がついている漢字を挙げると、酩酊、酩も酊も酔う意味です。酔も酉の字がつきます。醒めるも酒がつくから酒は人を迷わせます。酋長の酋も酉の字がつき、ふるざけの意味、うむ、熟す意味です。頭かしらを意味します。部下が来て宴会に酌をします。配下の配も元来は酒の色を意味しましたが、つま(妻)、つれあいの意味になり、配偶者の配になりました。配嫁・配享・配主などは婚礼の酒が付くかも知れませんが、配合・配給・配所・配膳・配達・配当・配分などの配は配る意味で、酒は関係ありません。さらに酒に縁のある漢字に焼酎の酎、本来は濃い酒です。当用漢字、常用漢字にありませんが、酣という字があります。酒を飲んで楽しむ意で、宴たけなわのたけなわの意味です。酣飲・酣歌・酣酣・酣唱・酣觴・酣酔・酣笑・酣眠など用語は多いのですが、酣賞は観賞、酣楽は歓楽になりました。でも本来は酣楽は酒を飲む楽しみです。酤の字は元の意味はひとよ酒、一晩で熟した酒でしたが、酤酒は酒を売る、買う意味です。米を原料にしますが酒に似て酒ではないものに酢や醤(油)があります。酸も酢ですが酸素に使われるほか、硫酸、塩酸など化学物資の名に使われます。乳製品の酥、醋、酪もあります。酬いるに使う漢字の酬は酒の杯を返す、返盃の意味です。報酬に使われます。酒造りを醸(かも)すと言いますが、醸と同じ意味の漢字の醞は逆に悪い意味の漢字も作りました。醜悪の醜、みにくいの意味です。悪の意味もあり、にくむとなり、あやしい、はじる、はずかしめるの意味になり、わるもの、みにくいものと成ります。お医者さんの医も本字は醫があります。酒は百薬の長ですが飲み過ぎてお医者さんに通わないように御注意下さい。

酉年、鶏は朝一番に鳴く鳥です。今年の干支はトリ年、闇夜を破って人より早く明るさを手にトリ入れましょう。