拝島大師旧本堂大黒さん奥に薬師如来・日光菩薩・月光菩薩、それに十二神将が揃いました。薬師如来、お薬師さんについて前号の続きです。
○ 薬師如来は病気を治してくれる仏さまだと信仰されましたが、考えて見れば、人間、いつかは病気になります。生きているものは必ず年を取って病気になります。仏教を始めたお釈迦さまも八十歳で病気で涅槃に入られ、弘法大師空海も六十二歳で病気で亡くなっています。空海と並び日本仏教の巨匠の伝教大師最澄は病気で亡くなったのでなく、心労極まってと五十七歳で入滅しています。いずれにしても身心両面の病気病いを人間は避けることができません。今日医学が発達し医療で治そうとしますが、万全とは行きません。神仏の加護を願うこと必然です。その最高位に薬師如来は在られるのです。奈良西の京の薬師寺薬師三尊、何と健康でたくましいふくよかなお像ではないでしょうか。
さて、前に述べた薬師十二願はその他、衆生が仏となるための諸の障害を除いてくれます。薬師如来の救いは衆生の生前の病気平癒だけではありません。衆生が臨終となり、死んでしまって後、初七日、二七日、三日と七日ごとにそれぞれ仏、菩薩、明王を本尊として法会が行われるようになることが、さきほどの薬師経の中国語・漢語への翻訳者で紹介した玄奘や義浄の時代の七世紀から八世紀の唐の時代に始まりました。初七日は不動明王、二七日は釈迦如来、三七日文殊菩薩、四七日普賢菩薩、五七日の三十五日は地蔵菩薩、六七日弥勒菩薩、そして七七四十九日が薬師如来、百か日は観音・勢至菩薩、一周忌阿閦如来、そして三回忌は阿弥陀如来としたのです。日本では平安時代末からそれが百か日観音菩薩、一周忌勢至菩薩、三回忌阿弥陀如来、七回忌阿閦如来、十三回忌大日如来、そして最後三十三回忌虚空蔵菩薩で、さらに十七回忌、二十一回忌、二十三回忌、二十五回忌、二十七回忌とあり、三十三回忌の後も三十七回忌、五十回忌、百回忌と続きます。 その仲でも非常に重要な法会はお薬師さんが担当する七七日、四十九日の忌明けの法会です。この死者四十九日の行程がチベットに伝わったのが死者の書と呼ばれます。奈良時代の行基菩薩四十九院建立も関連するのでしょう。お薬師さんはこれからは阿弥陀さんによく頼みなさいというのです。
以下次号