年という字はどんな意味でしょう。
もとは秊という字に作りました。「千の禾(のぎ)」という形で、たくさんの穀物がみのるという意味です。秊は季節の季によく似た字です。いずれも上に禾(のぎ)が付いています。禾は茎を表す木の上に丿が付いた字です。丿とは穀物の穂が垂れる形を象ります。ですが、それでイネ稲の穂を表します。
ムギ麦やキビ黍は垂れません。アワ粟も垂れますが、稲ほどではありません。因みに日本は昔から豊葦原瑞穂の國(豊に葦の繁る水に恵まれた美しい稲穂の国)と言われました。「実のるほど頭の垂れる稲穂かな」は大事な格言です。漢字が生まれた中国黄河流域、河南地方はムギやアワが作物でイネはありません。でも穀物の一番よいものを嘉禾といい、イネのことだとします。漢字を作った殷の人がイネを南方の長江流域から取り寄せていたことを物語ります。それで、年という字は「みのる みのり」と訓じます。年の一字で穀物を表します。穀物は一年かけて成長し、一年に一回成熟するので、年は正月元旦から十二月大晦日までの三六五日の一年の「とし」を示します。
また、人間や生き物は一年に一回「とし」を取るとし、これを「寿齢 よわい」と呼びます。年齢は昔は数えで、正月元旦に一歳年を取るというものでした。赤ちゃんはお母さんのお腹の中で一年近く成長し、その間もすでに人間として成長して日々を暮らしていると考えて年齢月日を数え、生まれてきた時に一歳と数えるのも意味があります。十二月三十一日に生まれた赤ちゃんは翌日元旦でたちまち二歳、逆に元旦生まれの赤ちゃんは翌年元旦で二歳です。また、年(秊)と意味が同じ漢字に秋があります。七五三の十一月は秋ですが、秌という字に同じです。この火は熟の下の部分、つまり灬のことです。それで秋は禾穀の成熟する時を言います。訓じて読むと、「みのり」「できどき」「とき(時機)」「とし(年歳、歳月)」と、年と非常に似通っていることが分かります。
他に「とし」を表わす漢字には歳・稔・載、さらに紀・寿・暦・霜・齢・籤などがあります。歳の代わりに才を使うこともありますが、人間歳を取れば取るほど智恵が付き、才能に磨きが掛かる。それで天寿を全うすれば万歳となります。七五三の紀年(記念)に来年の暦を準備し、霜のような災難が降りかからないように、よくお籤で占うのです。