△本年の干支は丙申、申歳ですので申という漢字を考えましょう。なお動物の猿という漢字は前回説明しましたのでその続きです。
○申歳、干支の申は申告、申請の申と覚えてください。申という漢字が猿に関係する事例を挙げましょう。干支の動物はその漢字はもともと動物には関係なかったとまことしやかに言われるからです。申という漢字は「説文」という後漢時代、今から二千年前の漢字の説明書には、「吏が晡時に事を聴く」とあります。晡は哺で食べ物を口に含む。猿が口の中に哺を含んだ象形だという説明があります。食べ物を口に貯える猿の顔、いかにも猿らしい愛嬌のある顔です。でも「吏が晡時に事を聴く」は官吏が晡時の午後四時に民の請願、訴訟を聴くのですがこの意味が重要です。請願には申請が、訴訟には申告が手続きとして必要です。でも、「説文」と同時代後漢時代に書かれた王充『論衡』物勢には、「申、猿なり」と明確に申は猿であると言っています。
○申はまた重ねるという意味があります。それから再びさせるという意味になります。再審査、再吟味、これは官吏の行う行政が間違いのないように、民の願いのように実施してくれることが大事です。
○申はさらに「もうす」となり、申し上げると言う意味になりますが、これは一に書類をもって上官に告げる、上書するという意味と、二に「いましめる」、注意を与える、言いつけるとなります。
○申はまた「のびる」という意味で、人偏を付けて伸となります。
○実は申の象形は、陰気がのびちぢみする意で、真ん中の「丨」はその伸びるに象り、その左右の「臼」はそのちぢまるに象ります。一説に、身をしめくくる意で、指事の字ともします。その場合には、「丨」はその身体の胴体、「臼」は両手でこれをつかね持つ意となります。身体をしっかり持つとは自分の身体の健康を十分に管理することを言います。また一説には、申はいなづまの意で電光に象るとも言います。
○猿が食べ物を口の中に貯える方法をとるのは、食事中に敵に襲われるのを防ぐためと言われます。でも口に物を含んで、もごもご言う。申す、申し上げるような猿の姿もよく見かけます。役所に申告するは二月三月の税金の季節、なにかと申請するのは仕事のため、そんな事は猿でもできるなど言わないでください。猿は日本語の古語では「ましら」、語源語義不明ですが、有力な一説にマサ(優)ルの転とも言われ、また「まし」もあります。猿が百獣中最も賢い、優秀な生きものだというのです。日本は猿の北限地、寒い日本ですから猿の顔は赤くなったのでしょう。