現在、コロナウィルスによる新型肺炎大流行の拡大を抑えるために世界中で東西南北の人の移動が制限されています。逆に流行伝播は方角があるので自分の位置から方角を正しく考えることが大事になります。そこで方位を意味する東西南北の漢字を考えることにします。今回は前回の南の次でにしです。西という漢字はもと鳥の字を表す弓の下に囱の上のノが無い字という鳥の巣を表わす字がつき、これで鳥が巣に帰る意味でした。なお、鳥の巣は木の上にあるので木偏に西で栖という字があり、棲と同じに使われます。いずれにしても西という字は太陽が西方に没する意味となります。東という字が太陽が東から出る字を表すのと丁度反対の意味になります。なお、西の音はセイが多いのですが、サイということもあります。孫悟空や猪八戒、沙悟浄が三蔵法師のお伴をして西域(サイイキ、セイイキ)地方からインドへお経を採りにゆく旅の物語は西遊記サイユウキといいます。日本は西が海で、太陽が西の水平線に没します。大阪四天王寺の西門から瀬戸内海が拡がり、春秋の彼岸の中日には西門の先に西方極楽浄土が見えると言います。この西方もセイホウではなくサイホウと呼びます。中国の西は砂漠が果てしなく続きます。冒険商人が駱駝ラクダで砂漠の旅をするのです。五行では西は金ですが、砂漠を西へ行くのは金儲けのためです。西には金があるのです。
また、草冠に西の茜は赤根とも書く赤色の染料ですが、九州筑後川流域で多く産します。真っ赤に燃えた太陽が西の海に沈む色です。空も海も真っ赤になる。九州の西の海は凄いですよ。その向こうの中国を古来日本人は何とか見ようとしました。江戸時代の頼山陽という人は天草洋に泊すで、「雲か山か呉か越か、水天髣髴青一髪」と漢詩を作っています。中国江南の呉・越を見ようというのです。日本語の「にし」は「し」が風の意味とされ、西の方から吹いてくる風を「にし」で意味したようです。万葉集巻七に「ぬばたまの夜渡る月をとどめむに西の山辺に関もあらぬかも」がありますが、柿本人麿に「東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」があります。この末尾の「月傾きぬ」は月西渡と書いていました。日本は列島が東西の関係が中心です。関東と関西、東大寺と西大寺、東本願寺と西本願寺、相撲も東方力士と西方力士、東西、東西、トウザイ・トウザイです。西から来た疫病神コロナはなんとしても撲滅しましょう。お大師さまのますますの活躍を期待します。南無大師常住金剛尊。