拝島大師旧本堂・大黒堂奥に薬師如来・日光・月光両菩薩、十二神将が揃いました。薬師如来、お薬師さんについて、前号の続きを述べます。
○薬師如来の随身守護の十二神将の十二の干支のそれぞれが、実は仏・菩薩・明王が御正体であると説明しました。十二支の動物を象った干支守りの御守があります。本年の干支は申年さる年です。仏・菩薩・明王の御本地を言えば、大威徳明王です。○大威徳明王は、不動明王らの五大明王の一で西方の明王です。無量寿仏忿怒とも別称します。わかりやすく言えば、阿弥陀如来の怒りの姿です。また別称に閻曼徳迦威怒王、あるいは六足を有すため六足尊といいます。中国では古くから文殊菩薩の化身といわれ、それゆえ密教図様の『胎蔵図像』では文殊院に描かれています。ただし、弘法大師空海が請来した両界曼荼羅(胎蔵)では、持明院に収められています。
○大威徳明王のお姿は、大きな三日月形の角を持った水牛に乗り六面六臂六足の図像で首から髑髏の瓔珞を胸飾りとして下げています。騎牛像は九州大分国東半島豊後高田市の遺品、長野県牛伏寺、滋賀県石馬寺、高知県桂浜竹林寺にありますが、牛伏寺のは水牛ではなく、日本の普通の牛です。他に比叡山延暦寺や京都大覚寺には木造立像が有ります。
○大威徳明王の持ち物はインドから中国へ八二四年ころ来たナ-ランダ寺院の学僧菩提仙の訳『大聖妙吉祥菩薩秘密八字陀羅尼修行曼荼羅次第儀軌法』によると、左上手は戟、次下手は弓、次下手は索、右上手は剣、次下手は箭、次下手は棒をとるとありますが、ほかに唐の密教大家一行『曼殊室利焔曼徳迦万愛秘術如意法』では左は鉾、輪索、弓、右は剣、宝杖、箭と順序と内容に若干の差異がありますが、すべて武器です。
わが国では平安時代後期より勝軍大威徳明王法に基づく戦勝祈願の本尊になりました。申年の本尊の正体から考えると本年の申年はなかなか激しい一年になり、神仏守護の御加護が大事なようです。
以下次号