川勝守著『万葉集と東アジア世界 上・下』刊行

本書はわが国の最初の国書・国民文学と言われる『万葉集』を国語・国文学また比較文学などの面での膨大な研究の上に、あえて「屋上屋を重ねる」愚を犯して「万葉集と東アジア世界」を論じようとするものである。ただ、私の「万葉集と東アジア世界」論はこのテ-マから窺える、万葉集は万葉仮名を使って日本語の固有な表記を行っても、所詮は中国文化の傘の中でのできごとであり、また、中国古典文学の『文選』の焼き直しに過ぎないなどなど、万葉集への中国文化の影響を数えあげると言った著作では断じてない。万葉歌人たちがいかなる環境で歌を詠んだか、その環境を当時、天平時代とその直近の時代に即して東アジアの国際的環境との関連で広く捉えてみようとしたい。この場合、当該時期の中国、朝鮮諸国との外交関係だけではなく、中国王朝の政治文化、律令制度とのからみも考察視点の一になる。

全二十章、『万葉集』4516首、結びの2章「大伴家持と万葉集」「万葉集と東アジア世界」。索引、英文レジュメ掲載。◆汲古書院、上巻:2020年(令和2年)4月15日刊   下巻:2021年(令和3年)5月20日刊