【漢字講座】実(み・じつ)

今回は秋も深まり、稲穂も色づき、柿、栗、葡萄そしてリンゴ、ミカンなど果物、果実が熟す、おいしい時期ですので実の漢字を取り上げます。なお、前回は同じなりものの果の漢字を取り上げました。

実の本字は實です。實は宀と貫の合字です。宀は家、貫は貨物で、貨物が家屋の下にみちること、家富むを本意とします。それが転じて、草木のみのる意味になり、みちふさがる意味になりました。家屋だけではありません。盆の上でも皿の上でも器物の上や中にいっぱいになるのが實、すなわち実です。でも先の果を念頭に置いて具体的な植物を考えますと、栗の実、柿の実、リンゴの実、梅の実、桜の実という言い方です。西瓜の実や瓜の実はやや変です。果と実は何となく使い分けがあるようです。ただ、梅や桜、西瓜や瓜、何でも果ですが、その中に種たねが有ります。それを実とも言います。子とも中国では書きました。核のことです。このたねから實の意味が展開したのです。實・実の意味をさらにいろいろ考えてみましょう。

まず、「たち」素質、本質があります。今流に言えば遺伝子です。実意というのは本心、まごころです。実行も誠実に行うこと。実行力が大事です。まごころもって実行しましょう。実年というのは実際の年齢、それが表面上は何歳に見えますかが健康に関係しますが、その間生きた働きの内容にも関係します。年相応に見えることが大事かも知れません。関連した意味に「まこと」があり、誠実の使い方です。「実の有るお答え」も「誠実な信頼できるお答え」です。次に「なかみ」内容です。なかみがないからっぽは「実が無い」といいました。だから勉強し努力して成長するのです。実力や実有の用例があります。次に「あと」行跡、事跡で名実伴うということが大事です。内容にも繋がります。次に「てがら」功績で功実といいます。その人の業績をいいます。次に「とみ」たから(宝)、「地」大地、「爵禄」「えもの」「みつぎもの(貢物)」などいずれも財物や御褒美物、賜物のような使い方があります。動詞としての使い方には①確かめる、②偽りなく申し出るなどがあり、副詞としての用法では「まことに」があります。なかなか大事な実の意味です。