本年の干支は乙未、未歳、ひつじどしですので動物の羊という漢字を説明します。干支の未は上が短く、上が長いと末だと覚えてください。未来、未明、未詳、未完成など、未の使い方は「いまだ・・・でない」という意味です。干支に子丑寅卯辰未午未申酉戌亥は本来動物とは関係ないとされますが、正しくありません。
実は十二干支は中国人が考えたものでなく、インドの仏教説話またはメソポタミア文明の十二進法の神話・月の数え方に由来するとも言われます。紀元前後の漢時代に中国に入りました。未という漢字は樹木の葉が重なって繁茂する意味ですが、羊の毛がふさふさしている状態のようで、羊の年を未年としたのです。
さて、羊という字は上を羊の角、下部を羊の四足と尾に象る象形文字とされます。羊は第一に家畜の一、五行では火・土に属し、易経八卦では兌に属す。次に羊は沢山群を成していますが、性格がおとなしく、温順でよく群がる、群がっても喧嘩(けんか)をしないことからよい(祥)意味になります。祥と善のこと、善良であることになります。ただ、おとなしすぎると、他にだまされ、そそのかされて、さまようことになります。それを漢字で表すと徉という字になりますが、羊という字自体にもその意味があります。さまよえる羊となるのです。
羊はおとなしい、善良な性格ですが、羊の付く漢字数字の熟語にはひどいものが多いので羊はかわいそう。羊狼は羊のように暴戻貪欲なこと、また羊狼狼貪は暴戻貪欲の譬え、羊は狼と同一視されています。羊質は内容の悪いこと、羊質虎皮となると、なかみは羊で質が悪く、外皮は虎で高価な上等な品物に見せること。みかけだおしのことです。羊頭狗肉は羊の頭を看板にして実際は狗、すなわち犬の肉を売ること、よい品を看板にして実際には質の悪い品物を売ること、立派そうに見せかけて卑劣なことをする譬えです。よく似た諺に「羊頭を懸けて馬肉を売る」というのもあります。「羊を以て牛に易う」は小さなな物をもって大きな物の代用にする。これもインチキです。「羊を亡って牛を得る」は小を失って大を得る。これは悪くはありません。得したことになります。仏教でも羊僧といえば鈍根愚痴の僧で質の悪い無能な僧を言います。唖羊僧と同じです。羊羹(ようかん)は本来は羊の煮こごり、「あつもの」ですが、今は小豆やイモで作るお菓子です。