不動明王・お不動さん

拝島大師本堂の大師宮殿の左手にお不動さんが祀ってあります。お不動さんは、正式には不動明王です。怒りの姿に偉大な力を示すもろもろの明王の中心尊です。不動明王・降三世明王・軍茶利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王を五大明王また五大尊といいます。

天台密教では五大明王=五大尊を大壇・息災護摩壇・聖天壇・十二天壇に安置し、念誦や神供の修法や護摩供を行って、各明王の偉大な力を勧請する祈りを徹底的に行って、兵乱鎮定、息災、現世利益などを願うのですが、平安時代以降、天皇または国家のために比叡山延暦寺天台座主以下の高僧が宮中に設けた五壇道場において修法しました。『源氏物語』賢木に、「五壇の御修法のはじめにて、(帝が)つつしみおはします隙をうかがひて、(朧に)例の、夢のやうに、きこえ給ふ」とあります。

中尊の不動明王は盤石にすっくと立つか、盤石に片足は下げ、片足は組む坐像の童子形です。大日如来に代わって修行者を守り、衆生のために下僕の姿をして献身する。たとえ燃えさかる火焔中の中にも飛び込み、右手に剣を立て、左手に索(つな=綱)をもって、下の歯で上唇を噛む忿怒形です。煩悩を断じる修行を行う行者を激励し、勇気・元気を与えます。半裸で赤黒い姿は皆さんを守り、所願を成就させる一方、怠り、悪い心を持った者を利剣で正氣に覚醒させ、それでもだめなら縄を掛けて引き立てるのです。不動明王を本尊として勧請し、護摩木以下、五穀や胡麻・芥子などを焚焼して供養し祈願する法を不動法また不動供、さらに護摩供といいます。供は食物を供えることです。行者は不動明王の修行に倍する修行を行いますので護摩修行といいます。これを単に護摩を焚くとか、護摩を頼むというのでは不十分です。必ず護摩供を差し上げるとか、護摩修行を練行するとかの正しい言葉も知りましょう。
不動使者という言い方があります。大日如来が一切の悪魔を降伏するために忿怒の相を現したとされます。左右に慧光・慧喜・阿耨達・指徳・烏倶婆迦・清浄・矜迦羅・制多迦の八大童子を従えます。最後の矜迦羅(こんがら)・制多迦(せいたか)の二童子は拝島大師本堂の不動明王にも見られます。なお、八大明王は降三世・大威徳に大笑・大輪・馬頭・無能勝・歩擲の不動明王眷属を数えますが、他尊の場合もあります。