【漢字講座】栗・柿(くり・かき)

img1510_2○日本の秋の果物の代表は栗・柿です。各漢字の意味を考えましょう。 
栗という漢字は木の上に垂れている実の形がつきました。栗の実が沢山高い木の枝についている様子を表しています。それから栗という漢字が「みいりが良い」という意味になり、実って充実すると実が締まり堅くなります。これは人間も同じです。堅く締まった、内容が充実している人物は栗のように香しい人間なのです。

さらに栗の漢字の意味を展開させますと、厳しいという意味があります。厳しく威厳がある。これも人物のハイクラスです。しかし、反面風雪に耐え厳しく寒いことになり、慄然の慄=栗となります。栗烈は寒さが厳しい形容です。栗冽も同じ意味です。また戦栗となり、身の毛もよだつとなると、恐ろしくなります。栗然はおそれるさま、そのような人物に逢うと恐い人物にあったとなります。戦栗は慎むことにもなります。栗如も慎むさまを言います。栗斯は謹み敬うさまを言います。慎むは謹むともなります。年賀ハガキに「謹んで新年のお祝いを申します」は、身を引き締めて新年に幸福があるようにと祈願する意味なのです。いずれにしても年々、勉強をして、また生活を充実させて栗のように堅い人間になるのです。
  
ここで栗が木になる状態を想像させる栗の熟語を挙げましょう。栗駭は栗が熟していがから飛び出すこと、栗罅とも言います。栗毬は栗のいがのこと、丸いまりのようです。でもとげがあって、刺すと痛いから栗刺も栗のいがのことです。この栗は日本では五、六千年前の縄文時代から、栽培されて来ました。
 
○柿の漢字ですが、この字は柹と同じ「かき」です。柿は世界各地にあり、中国では黄河流域・山東半島以南、長江流域に特に多いのですが、渋柿がほとんどです。日本にも古来から記録があり、日本原産種があったと考えられます。日本では早くから野生種と栽培種に分かれ、甘柿の種類の多いことは世界一で他国の追従を許しません。

柿は本来はすべて渋柿でそれが秋の終わりころから熟柿になると甘く食べられました。干し柿は柿の皮を剥いて風に当てますと甘くなります。焼酎に漬け渋抜きしても甘く食べられます。日本の福島県以南の本州、四国、九州には改良種の甘柿があります。富有柿、次郎柿、禅師丸など、日本人が改良した甘い柿は秋の味覚の醍醐味です。中でも富有柿は岐阜県原産で上品な味ですが、それを上廻る豪快な味の江戸一という柿が江戸東京周辺で近世末に流行し、百匁柿は大きさで対抗しました。

柿の赤い色を焼き物で出そうと酒井田柿右衛門が奮闘したことは有名です。柿が好きだったのでしょう。