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古典会だより-お彼岸(ひがん)-

旧暦二月と八月(現行三月と九月)は彼岸月とも呼ばれます。地球の中心軸、地軸は23・5度南北に傾いており、自転(自分でまわる)して、昼夜を生じ、一年かけて太陽のまわりをまわり(公転)ます。日本は北半球のちょうど適度の緯度の位置にあるお蔭で春・夏・秋・冬の四季の恵みにあずかっています。また春と秋に2回太陽と地球が真横の位置になり、北と南に多少のズレはあるものの、日は真東から昇り、真西に沈み、しかも昼と夜の長さが同じになる、その日が春分・秋分です。三月二十一日ころの春分、九月二十三日ころの秋分の日の前後三日間を含めた七日間を彼岸と言い、初日を入(い)り、春分・秋分の日はお中日(ちゅうにち)、最後の日は明(あ)けと言われます。春分は、冬至から太陽が少しずつ勢いを増して来て、夜と昼の長さ、寒暖の差が変転する分岐点であり、秋分は、夏至から猛威を奮った太陽が勢いを弱め、昼と夜の長さ、暑さ寒さの節目と考えられ、「暑さ寒さも彼岸まで」と言われます。時には「なに事ぞ彼岸過ぎてのこの暑(寒)さ」もありますが。
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古典会だより-お盆さん-

近年、考古学の発展はめざましく、沖縄県での約2万4000~1万6000年前の旧石器時代、或いは千葉県千葉市の特別史跡加曽利貝塚の縄文時代中期から晩期(約3000年前)の発掘遺跡などから、日本では可能な限り、死者を丁寧に葬り、その後も、共に生き続けてきました。七月は盆月とも言われ、旧暦では秋のはじめ、所によっては月遅れの八月です。 続きを読む

古典会だより-衆人愛敬しゅうにんあいぎょう寿福増長じゅふくぞうちょう-

延喜5年(905)撰集の『古今和歌集』仮名序に「やまとうた(和歌)は、人の心をたね(種)として、よろづのことの葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにつけて、言ひいだせるなり。・・・ちから力をも入れずして、あめつち天地を動かし、目に見えぬ鬼神をも、あはれと思はせ、おとこ女の仲をもやはら和げ、たけき猛もののふ武士の心をも、慰むるは歌なり」と歌の真意を述べています。 続きを読む

古典会だより-春の七草 ハコベ-

ハコベラ、ハクベラ、アサシラゲ 蘩縷・蘩婁・鵝腸・鵝腸菜
我が国いたるところのやや陰地に好んで自生するナデシコ科の二年生草本。ほぼ世界中に分布。鶏のヒナが好んでついばむところからヒヨコグサと呼ぶ地方が多く、英語もchick-weed(ヒヨコ草)とする。ナデシコ科はナデシコやセキチクのように花が大きくてきれいなものやハコベやミミナグサのように小さくて目立たない花もあり、一見違って見えますが、茎の節がはっきりしていて、葉は対生、花は五まいのがく、五まいの花びら、十本のおしべと一本のめしべからなり、果実は熟すと裂け,沢山の種子が出来ることなどの共通点があり、アメリカナデシコ、セキチク、ナデシコ、カ―ネ―ション、ハコベ、ミミナグサ、ノミノフスマ、ムシトリナデシコ、カスミソウ、ツメクサなど多彩です。
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古典会だより-お正月

日本の国は、春夏秋冬と、四季の変化に恵まれ、折々の節目を大切にし、楽しんで来ました。旧暦一月二月三月は春、四月五月六月は夏、七月八月九月は秋、十月十一月十二月は冬とし、自然、人事、事物でも各季節を表し、語句一旬で豊富な内容を展開します。『俳句歳時記』に載る季題、季語は旧暦、新暦(今使われている暦)でほぼ一ヶ月のズレがあるため、「七夕」のように季節は夏ではなくて秋の季語になっていたりして、多少の違いがありますが、おおむね当たっているところしょう。
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古典会だより-秋の七草・撫子 瞿麦 なでしこ ナデシコ

万葉集』に山上憶良(六六〇-七三三)の「秋の野に咲きたる花を指折りかきかぞふれば七種の花」「萩の花、尾花、葛花、瞿麦の花、女郎花、また藤袴、朝顔の花」とありますが、秋の七草は日本固有種で、「ハギ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、オミナエシ、クズ、フジバカマこれぞ七草」と親しみ口づさまれ、千三百年以上も前から観賞用として姿、形、香りの良さが愛されて来ましたが、食用、薬用、建築工芸用にと、実に多様で有用なものでした。
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古典会だより-お彼岸(ひがん)-

日本は春夏秋冬、四季の移り変わりに恵まれ、それぞれの季節のはじまり、真っ盛り、終わりを大切に考えてきました。小寒・大寒・節分・立春・雨水・啓蟄・春分・穀雨・立夏・芒種・入梅・夏至・小暑・大暑・立秋・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至などの言葉があります。各季節の順当なめぐりを願って、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間は土用と言いますが、夏の土用が代表です。
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古典会だより-鯉 鯉のぼり

△鯉はコイ科の淡水硬骨魚。上あごに2対のヒゲがあり、口には歯がなく、のどに10個の臼歯。頭を除いて表面は丈夫な丸形鱗でおおわれ、背面一列はおよそ36枚なので、別名六六魚とも言われ、「六六変じて九九鱗となる」と言う中国の諺は、龍は81枚の鱗があるとされての話です。河南省洛陽上流で山西省から陝西省に黄河を渡る辺りに「龍門」と呼ばれる急瀬があり、特に優秀な鯉だけが登って龍になると言われ「登龍門」の言葉が生まれ「出世魚」と称されました。 続きを読む

古典会だより-春の七草 オギョウ ハハコグサ―

△母子草、ハハコグサ、ホウコグサ、オギョウとも呼ばれ、日当たりの良い道ばた、野原に自生するキク科の二年生草本。東アジアの温帯から熱帯に広く分布。高さ10~40㎝。秋に芽を出し、冬から早春に根生葉を出す。若葉は白い綿毛でおおわれ、やがてもとで分かれた茎が伸び、茎葉は互生し、線状へら形で縁はやや波状、先はまるみをおび、厚みがあって白い綿毛が密生し全緑色。
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古典会だより-梅、春告草、匂草、香散見草

バラ科の落葉喬木。桃、桜、杏、花梨などと同じ仲間で、葉より先に花が咲き、しかもいずれもそれぞれ図抜けて美しく、果実は食用、薬用共に有効です。とりわけ梅は、未だ寒中の早春に百花にさきがけ、高い香気を放って馥郁と咲き、気品ある清雅な花として好まれてきました。『万葉集』では一四〇首の萩に次いで数多く(一〇〇余首)取り上げられ(桜は四〇余首)、野山のだけでなく古くから庭に植え、愛好されてきました。春告草(はるつげぐさ)、匂草(においぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、香栄草(かばえぐさ)、初名草(はつなぐさ)、好文木(こうぶんぼく)、木花(このはな)などの愛称もあります。
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